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東京簡易裁判所 昭和62年(ろ)280号 判決 1987年11月18日

本店所在地

東京都千代田区有楽町一丁目三番地

(実質上の所在地

同都中央区銀座四丁目一四番二号 三宝ビル二階)

株式会社読売写真ニュース専売所

(右代表者代表取締役 紙谷勝次)

右の者に対する法人税法違反被告事件にき、当裁判所は検察官杉田就、同髙谷實出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社読売写真ニュース専売所を罰金二二〇〇万円に処する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社読売写真ニュース専売所(以下「被告会社」という。)は、東京都千代田区有楽町一丁目三番地(実質上は同都中央区銀座四丁目一四番二号三宝ビル)に本店を置き、読売新聞社発行の読売写真ニュース等を全国の学校等に配給する事業を目的とする資本金二〇〇万円の株式会社であるが、被告会社の代表取締役として被告会社の業務全般を統括している紙谷勝次において、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五八年二月一日から同五九年一月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六一五一万二一一八円あった(別紙一の1修正損益計算書参照)にもかかわらず、同五九年三月三一日、同都千代田区神田錦町三丁目三番地所在の所轄麹町税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五〇七万八八〇〇円でこれに対する法人税額が一五二万三四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六二年押一一号の一)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二四八七万五〇〇〇円と右申告税額との差額二三三五万一六〇〇円(別紙二の1ほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和五九年二月一日から同六〇年一月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八三七五万五七四四円あった(別紙一の2修正損益計算書参照)にもかかわらず、同六〇年三月二九日、前記麹町税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一三五万五七九六円でこれに対する法人税額が四二万円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の二)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三五二八万一九〇〇円と右申告税額との差額三四八六万一九〇〇円(別紙二の2ほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  昭和六〇年二月一日から同六一年一月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四二七五万六〇五四円あった(別紙一の3修正損益計算書参照)にもかかわらず、同六一年三月二九日、前記麹町税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一七二万四六九七円でこれに対する法人税額が五三万四四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の三)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一七五二万九三〇〇円と右申告税額との差額一六九九万四九〇〇円(別紙二の3ほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  渡辺隆明の検察官に対する供述調書(六二・七・一三付)

一  紙谷勝次の収税官吏に対する質問てん末書七通

一  紙谷富夫の当公判定における供述

一  同人の検察官に対する供述調書四通(六二・七・七付、六二・七・八付、六二・七・一四付―「一、税務調査後も」と書き出しのもの、六二・七・一五付)

一  同人の収税官吏に対する質問てん末書二通

一  石島丈嗣の検察官に対する供述調書

一  渡辺隆明の検察官に対する供述調書(六二・七・九付)

一  収税官吏渡辺隆明作成の、次の各調査書

一1  契約額収入調査書

2  棚卸高調査書

3  売上原価(掲示板)調査書

4  売上原価(写真)調査書

5  荷造発送費調査書

6  役員報酬調査書

7  給料手当調査書

8  外交員報酬調査書

9  旅費交通費調査書

10  租税公課調査書

11  交際接待費調査書

12  雑費調査書

13  口座管理料調査書

14  有価証券売買損益調査書

15  投資信託等分配金収入調査書

16  受取配当調査書

17  役員賞与損金不算入調査書

18  寄付金調査書

19  附帯税等損金不算入調査書

20  雑収入調査書

21  事業税認定損調査書

一  登記官菊岡保(七通)及び同伊久美和夫(一通)作成の商業登記簿謄本判示第一の事実につき

判示第一の事実につき

一  法人税確定申告書一袋(六二押一一号の一)

判示第二の事実につき

一  法人税確定申告書一袋(六二押一一号の二)

判示第三の事実につき

一  法人税確定申告書一袋(六二押一一号の三)

(法令の適用)

被告会社の判示各所為は、法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、情状により、それぞれ同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により、各罪につき定めた罰金の合算額の範囲内で、被告会社を罰金二二〇〇万円に処することとする。

(量刑の事情)

被告会社は、読売新聞社が発行する読売写真ニュース(及び掲示板)を(いわゆるスポンサーからの契約代金によって)小、中、高等学校に配給することを目的とするものであるが、その代表者である紙谷勝次が、同業者との競争裡の会社の生存と自己の将来の生活不安に備えるためとして、被告会社の業務に関し、契約額収入の一部を除外することにより、三事業年度分合計で七五〇〇余万円の法人税を免れた事案である。そのほ脱税額は多大で、ほ脱率が通算平均約九六パーセントというものであり、簿外の利益は、右代表者の、有価証券や金地金等の購入等に使用し、その額も多額である。

しかも、被告会社は、約七年も前から正しい申告をしていないうえ、昭和五八年には、所轄税務署の税務調査を受けた際、「以後適正な会計処理を行うことを誓約」しながら、引き続き、本件違反を継続したものであって、被告「会社」としての納税義務に対する規範意識の欠如がはっきり認められ、その犯情は寔によろしくない。

このことと、被告会社は、前掲証拠により認められる如く紙谷勝次の個人経営とも言い得るものであるが、本件事犯の査察調査に対しては、当初から同人を始め、同族の関係者らは、率直に言動し、ほ脱の結果についても、諸税をすべて完納していること及び今後の会計処理等、会社としての運営につき反省し、配慮がなされつつあること等を総合勘案し、主文の量刑とする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 深澤保二郎)

別紙一の1

修正損益計算書

株式会社読売写真ニュース専売所 No.1

自 昭和58年2月1日

至 昭和59年1月31日

<省略>

別紙一の2

修正損益計算書

株式会社読売写真ニュース専売所

自 昭和59年2月1日

至 昭和60年1月31日

<省略>

別紙一の3

修正損益計算書

株式会社読売写真ニュース専売所

自 昭和60年2月1日

至 昭和61年1月31日

<省略>

別紙二の1

ほ脱税額計算書

株式会社読売写真ニュース専売所

自 昭和58年2月1日

至 昭和59年1月31日

<省略>

別紙二の2

ほ脱税額計算書

株式会社読売写真ニュース専売所

自 昭和59年2月1日

至 昭和60年1月31日

<省略>

別紙二の3

ほ脱税額計算書

株式会社読売写真ニュース専売所

自 昭和60年2月1日

至 昭和61年1月31日

<省略>

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